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暗号資産に関する規制の動きを追っていると、2024年12月の状況が、すでにかなり前のことのように感じられます。たった12か月前と比べても、現在の世界全体の政策環境は大きく変化しました。変化のスピードは非常に速く、その勢いが弱まる兆しはほとんどありません。
そこで2026年に入る前に、2025年に起きた主な規制の変更点を振り返ります。グローバル全体の流れ、地域ごとの動き、そして2026年に特に注目されるトピックについて整理します。より詳しい背景や分析は、チェイナリシス Road to Crypto Regulation シリーズと2025 Geography of Cryptocurrency Reportをご覧ください。
世界の視点から見る、デジタル資産政策「5つの大きな流れ」
1. 規制導入の進捗と、運用段階での摩擦・課題
ここ数年、各国・地域で、デジタル資産を対象とする包括的な規制枠組みの整備が進んできました。進み具合に差はあったものの、全体としては大きな前進が見られました。ただし、その進展は国や地域により不均一でした。
2025年になり、「法律を作る段階」から「実際に運用・実装する段階」に移行すると、その実装プロセス自体が、立法(法律を作ること)と同じくらい、政治的にも実務的にも複雑であることが明らかになりました。
EU ではMiCA(Markets in Crypto‑Assets)は、2025年初めに全面適用となりました。これにより、これまでAML (マネー・ロンダリング対策)中心」の個別ルールに頼っていた体制から、世界で初めての包括的な暗号資産の共通ルールへと移行を図っています。ただし、この移行の進み方は、加盟各国で一様ではありません。
ESMA(欧州証券市場監督局)やEBA(欧州銀行監督機構)は、技術的な基準や監督体制をそろえるための取り組みを進めていますが、それでも各国ごとに、条文の解釈や実装方法に違いが残っています。特にステーブルコイン制度については、次のような論点が、実務上まだ整理の途中にあります。
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複数の事業者が共同で発行・運用する「マルチ発行モデル」をどう扱うか
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e-money token(電子マネー型トークン)の位置づけをどう整理するか
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既存のPayment Services Regulation(決済サービス規制)やMiFID金融商品市場指令)との整合性をどう取るか
こうした「新しい暗号資産のルール」と「もともとある決済・投資サービスのルール」との関係整理が、実務上の大きな課題になっています。
同じような「実装段階での課題」は、他の地域でも見られます。例えばシンガポールでは、Financial Services and Markets Act に基づく Digital Token Service Provider 規制の迅速な展開により、事業者が法的影響の評価を急ぐ事態となりました。世界全体では、トラベルルールの実装も、事業者側・規制当局側の両方にとって課題となっています。具体的には、次のような点が問題になりやすくなっています。
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「サンライズ問題」(国ごとに施行時期がずれることで生じるすき間)の発生
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アンホステッドウォレット(取引所などを介さない個人ウォレット)の扱いをどうするか
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規制当局側・事業者側ともに、技術やリスクに関する専門知識をどこまで確保できるか
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各社・各国が使うツール同士の相互運用性(互換性)をどう確保するか
このように、「ルール作り」が終わっても、実際の運用段階で進み具合に差が出たり、初期段階ならではのトラブルや課題が発生したりするのは、むしろ自然なことと言えます。こうした規制が成熟していくのに伴い、2026年も引き続き、摩擦の解消や、コンプライアンス(法令順守)・監督の能力を高める取り組みが続くと見込まれます。
2. ステーブルコインの台頭と、ルール再編
米国では、ステーブルコインに関する包括的な法律であるGENIUS 法が成立しました。
これにより、米国内のステーブルコイン発行者に対する連邦レベルでの共通枠組みが整っただけでなく、他国の政策にも影響を与える国際的なベンチマーク(標準的な参考モデル)ができました。その結果、世界各国でステーブルコイン政策を進めようとする動きが加速しました。
現時点で、ステーブルコインに関する法律がすでに施行されているのは、日本、EU、香港など一部の国・地域に限られています。しかし、韓国や英国などでも、発行体をどう規制するかについての制度設計が進んでいます。議論の対象は、単に「価格を安定させる方法」や「準備資産が十分かどうか」「監査・アテステーション(第三者確認)」といった技術的な点にとどまりません。金融の安定性、資本移動管理、AML/CFTへの影響など、金融システム全体への波及も含めて検討されています。
規制が整備されるにつれ、世界全体でのステーブルコインの使われ方も、徐々に組み替えられつつあります。例えばEUでは、暗号資産サービス提供者(CASP:Crypto‑Asset Service Provider)が、MiCAに適合しないステーブルコインを提供できない、もしくは大きく制限されるケースが増えました。その結果、MiCAに適合したステーブルコインに資金が戻る動きが見られます。
米国では、GENIUS法によって、海外で発行されたステーブルコインが、米国内でどのような条件で提供できるかについても一定の制限が設けられました。今後は、次のような点が、各ステーブルコインの国際的な存在感に大きく影響すると考えられます。
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規制を受けていないステーブルコインの流通をどこまで規制するか
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各国・各地域の規制当局が、お互いの監督結果を「相互承認」したり、「パスポート制度」により一度の認可で複数国での提供を認めたりするかどうか
3.トークン化の進展(国債や金などの“デジタル証券化”)
2025 年の顕著なテーマは、金融資産や実物資産のトークン化です。これは、米国債や金などの資産を、ブロックチェーン上のトークン(デジタル証券)として扱う動きです。
例えば、米国債を裏付け資産とするトークン化マネーマーケットファンド(短期金融商品に投資するファンド)の運用資産残高は、2025年12月時点で80 億ドル超、また、金などの商品を裏付けとしたトークンの商品でも、運用資産残高は35 億ドル超に拡大しました。規模としては、まだ伝統的な金融市場全体に比べれば小さいものの、2025年は強い成長を示した年と言えます。
各国の規制当局は2025年、総じて「実験を重視しつつ、前向きに支援する」姿勢をとりました。具体例としては次のようなものがあります。
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シンガポールでは、中央銀行であるMASがProject Guardianを通じて、これまでのパイロット(試験的な取り組み)から、実際の運用を見据えたプライベートブロックチェーンでの運用枠組みへと進化させました。また、トークン化された中央銀行手形(中央銀行が発行する短期証券)の試験計画も発表しました。
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米国では、証券取引委員会(SEC)が5月にトークン化をテーマとした公開の円卓会議を開催し、7月には「Project Crypto」というプロジェクトで、証券法をブロックチェーン上の取引にどう当てはめるかを検討しました。12月には、DTC(証券の決済機関)が有価証券のトークン化スキームを認める内容の「ノーアクションレター」(違法と見なさないことを示す書簡)を出し、市場インフラの中枢にもトークン化が入り込む未来が現実味を帯びました。
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EUでは、資本市場の競争力を高める柱の一つとしてトークン化を位置づけ、DLTパイロット・レジーム(分散型台帳技術を用いたパイロット制度)の見直しを進めています。ESMAは、制度を投資家や事業者にとってより魅力的なものにしつつ、真に統合されたデジタル対応の資本市場を実現するための提案を出しています。
4. 伝統的金融(TradFi)の本格参入
2025年には、銀行をはじめとする伝統的な金融機関が、暗号資産に本格的に参入しました。具体的には、暗号資産の価格に連動する金融商品、ステーブルコインの発行、カストディ(顧客資産の保管)、取引サービスなどです。
この背景には、特に米国での規制当局の姿勢転換があります。2025年中に、FDIC(連邦預金保険公社)、OCC(通貨監督庁)、FRB(連邦準備制度理事会)が、それまでの慎重・抑制的だった声明を見直し、銀行が暗号資産に関与できる余地を広げました。
さらに、国際的な銀行規制のルール作りを担うバーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、銀行が保有する暗号資産エクスポージャー(リスク資産)についての自己資本規制基準を再検討する意向を示しました。これは、これまでの基準が過度に厳格だという業界の懸念に対応するものです。
また、銀行が暗号資産事業者やステーブルコイン発行体にサービスを提供する際のAMLリスク管理についても、明確なガイドラインが示されました。ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)とWolfsberg Groupが、それぞれ指針を公表し、銀行が暗号資産関連の顧客と取引する際に、どのようにリスクを評価し、管理すべきかを説明しています。
EUでも、MiCAの実装とそれによるルールの明確化により、調和されたルールブックの下で、伝統的な金融機関が暗号資産やトークン化プロジェクトを進めやすくなっています。
5. 金融犯罪と資産回収への注目の高まり
暗号資産の利用が広がると、それを犯罪目的で悪用する機会も同時に増えます。そのため、各国の政策当局や法執行機関の間では、次の3点への対応が急務となっています。
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暗号資産を使ったマネーロンダリング・テロ資金供与リスクへの対策強化
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犯罪収益を再び犯罪に使われないようにするための、資産回収の強化
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官民連携(法執行機関と民間事業者の協力)の活用
FATF(金融活動作業部会)の2025年の資産回収ガイダンスでは、暗号資産を差押え、管理し、被害者に返還するまでのベストプラクティスが示されています。ここでは、ブロックチェーン分析ツールの活用や、官民連携の重要性が明確に打ち出されています。
また、近年増加しているサイバー型詐欺や投資詐欺も大きな焦点になっています。英国では、「承認された⽀払い詐欺」の被害補償ルールが導入され、送金を仲介する銀行などにも責任を負わせる動きが強まりました。これに続き、オーストラリアやタイでも、金融機関やテクノロジープラットフォームなどのゲートキーパーに対して、一定の義務や、義務違反時の制裁・損失分担を義務付ける規制が打ち出されました。
これらに合わせて、マネーミュール(名義貸し口座など)を検知する仕組みや、不正取引監視の体制が十分かどうかについて、監督当局のチェックが強化されています。
運用面でも、米国は制裁対象となる重要ネットワークや、その仲介者に対する制裁、前例のない規模の資産押収、そして「Scam Center Strike Force」の設置などを通じて、暗号資産を使った国際的な投資詐欺ネットワークの壊滅に取り組んでいます。アジア太平洋地域を含む各国でも、詐欺への対策が強化され、暗号資産差押えの成功事例が増えています。
暗号資産への信頼を高め、銀行や機関投資家などによる制度的な採用を広げるためにも、こうした分野での政策対応・実務の強化は、今後も続くと見られます。
地域別の動き(収れんと分断)
米国: 新たな政策軌道で市場が加速
世界の暗号資産情勢の中で、2025年に最も大きな変化があったのは米国です。新政権は、それまでの対立的・抑制的な政策スタンスを改め、デジタル資産を戦略的に重要な分野として受け入れる方針を明確にしました。
2025年7月には、デジタル資産に関する大統領作業部会が、包括的なロードマップを公表しました。そこでは、次のような点が示されています。
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GENIUS法の迅速な実装
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AML規制の近代化
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市場構造に関する新しい法律の制定
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CFTC(商品先物取引委員会)とSECが、既存の権限を使って、デジタル資産取引を可能にするための体制づくり
CFTCとSECも、より「ビジネスに前向きな環境」への転換を後押ししました。SECは、暗号企業に対する訴訟ベースの強制執行を抑え、SAB121という会計上の指針を撤回しました。また、「米国の金融市場をブロックチェーン上に移す」ことを全社的な目標とするProject Cryptoを発表しました。CFTCも同様に、「crypto sprint」と呼ばれる取り組みを進めています。
両機関は、スポット暗号商品の取引に関する共同声明や、2025年9月の共同円卓会議などを通じて、連携を強化しています。
銀行規制当局の姿勢にも変化がありました。2025年4月、FDICは、被監督機関が暗号関連活動を行う際の事前通知義務を撤回しました。7月には、FDIC、OCC、FRBが、暗号資産カストディに関するリスク管理の考え方を公表しました。12月にはFRBが、預金保険の対象ではない州加盟銀行によるデジタル資産活動への関与に、前向きな姿勢を示す声明を出しました。
立法面では、GENIUS法の成立により、ステーブルコイン発行体に対する連邦レベルの共通枠組みが整備されました。これにより、準備資産の持ち方、監査の要件、金融インテグリティ(不正利用を防ぐ仕組み)に関する要件が定められました。具体的な実装作業はこれから本格化し、2026年7月までに最終的なが策定される予定です。施行期限は2027年1月であり、今後も規制当局による細部の調整が続きます。
一方、市場構造に関する法制については、下院が2025年7月にCLARITY法案を可決し、上院の銀行委員会と農業委員会もそれぞれ討議草案を公表しました。ただし、これらをどのように一本化し、最終的な形にまとめるかという調整は2027年以降に持ち越される見込みで、多くの優先課題がある中、どの程度のスピードで進むかは不透明です。
アジア太平洋:多様な出発点から、一段と高まる動き
アジア太平洋(APAC)地域には、日本、マレーシア、タイなど、暗号資産規制で先行している国があります。2025年は、市場拡大や各国間の競争、先進国の政策の影響などを背景に、規制整備のモメンタムが広く、かつ速く高まりました。各国のスタート地点は異なりますが、多くの国で、市場行為(投資家保護など)と金融安定の両方をカバーする包括的な枠組みが作られつつあります。
主な国・地域の状況は次のとおりです。
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日本は、最も成熟した暗号資産市場の一つとして、暗号資産を投資商品としてどう規律するかに関する改革や、税制の見直しが進んでいます。
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韓国では、
韓国では、バーチャルアセット利用者保護法(英語名:Virtual Asset User Protection Act)の下で、初めて不公正取引事件が検察に送致されました。また、複数のステーブルコイン関連法案が国会に同時に提出されており、どの案が最終的に採用されるかが注目されています。
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香港では、カストディとディーリングに関する規制提案、香港国内の取引プラットフォームが世界の流動性にアクセスするための計画、そして2025年8月のStablecoin Ordinance(ステーブルコイン条例)の成立など、バーチャルアセットに関する制度整備の動きが活発になっています。最初のライセンス付与は、2026年初めになると見込まれています。
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シンガポール シンガポールは、FATF第5次相互審査(バーチャルアセットおよびVASPに対する有効性評価を含む本格的な審査)を、この地域で最も早く受審しました。これにより、暗号資産分野でのAML/CFT対策が実際にどれだけ機能しているかを示すことが、これまで以上に重要な課題となっています。
その他の国々でも再編が進んでいます。
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インドネシアでは、暗号資産の規制管轄が商品先物庁(Bappebti)から金融監督庁(OJK)に移り、暗号資産を「商品」ではなく「金融商品」として扱う方向性が示されました。
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フィリピンでは、証券取引委員会(SEC)が新しい規制によって権限を拡大し、消費者保護と市場の健全性を強く打ち出しています。
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オーストラリアでは、Corporations Amendment (Digital Assets Framework) Bill 2025の審議が進み、証券・投資監督庁(ASIC)はINFO 225を更新して、既存の金融規制がデジタル資産にどう当てはまるかをより明確にしました。
APACの中でも、パキスタンとベトナムは、特に大きな転換を見せました。両国とも、インフォーマル(非公式)な暗号資産市場が大きい一方、以前は暗号資産に対して制限的、もしくは立場が不明確でした。
- パキスタンは、暗号資産の取引禁止を撤廃し、包括的な規制へと方針転換しました。Pakistan Crypto Councilと新たなVirtual Assets Regulatory Authorityを設置してライセンス付与と監督に乗り出しました。
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ベトナムは、暗号資産に法的な地位を認め、暗号資産取引所について試験的な認可制度(パイロットプログラム)を法律で定めました。これにより、これまで「グレーゾーン」とされていた状態から、正式な市場として位置づけられる方向へと移行しています。
ヨーロッパ: MiCA 規制の本格運用
EUのMiCA規制は、現時点で世界で最も包括的な暗号資産規制枠組みといえます。全面適用から1年で、暗号資産サービス提供者(CASP)の許可件数は90社を超えました。また、電子マネー型トークン(EMT)の発行者も多様化し、ユーロ建てステーブルコインの利用が拡大しました。
ESMAやEBAによる複数のRTS/ITS(詳細な技術基準)の公表により、MiCAの実装に関する実務的なガイダンスも整ってきています。これらは、伝統的な金融機関が暗号資産・トークン化ビジネスに参入することを後押ししています。
同時に、MiCAは、実際の運用の場で制度の効果や課題を確認するための重要なテストケースにもなっています。例えば、次のような論点について継続的な議論が行われています。
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発行スキームが複数の主体にまたがる「マルチ発行モデル」をどう扱うか
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EU域外の制度との同等性評価をどのように判断するか
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EMTが「資金」と「暗号資産」の両方に該当し得る場合、EUの決済規制との関係をどう整理するか
EUの「貯蓄・投資連合(SIU)」構想や、CASPにとっての真の意味での「レベル・プレイング・フィールド(公平な競争環境)」を実現するため、欧州委員会は監督モデルの再設計を提案しています。その中では、投資サービス当局であるESMAに、すべてのCASPに対する認可・監督の直接的な権限を与える案も検討されています。
AML分野では、これまで各国ごとにばらつきがあった5AMLD(第5次マネーロンダリング対策指令)から、EU全体で直接適用される「AMLR」への移行が進んでいます。AMLRは、CASPを含むすべての義務主体に対して、より明確で統一された期待水準を課すものです。
新しいEUのAMLA(EUレベルのAML機関)は、AMLRを一貫して実装するための追加ガイダンスを策定しており、2027年7月10日に適用開始予定です。AMLAは暗号資産を優先課題に位置づけており、2028年からは、CASPを含む企業を自ら直接監督することを目指しています。これは、中期的には、各国ごとにばらばらに監督するのではなく、EUレベルで集中的にデータを集め・分析し、その結果に基づいてAML監督を行う体制に移っていくことを意味します。
MiCAとAMLRが中核となりますが、CASPはDORA(Digital Operational Resilience Act:デジタル運用レジリエンス法)などの他の枠組みにも適合する必要があります。DORAは、サイバー攻撃やシステム障害に対する耐性(オペレーショナルレジリエンス)について、要求水準を大きく引き上げるものであり、CASP全体のコンプライアンス体制に大きな影響を与えます。
英国:周辺的な立場からの転換
英国ではここ数年、FCA(金融行為監督機構)によるAML制度と、その後に導入された限定的な暗号資産の広告・勧誘規制しかなく、暗号資産に関する規律は事実上、周辺的な扱いにとどまっていました。
しかし2025年は、英国にとっての転換点となりました。イングランド銀行は、金融システム全体に影響を与えかねない規模のステーブルコイン(いわゆる「システミックなステーブルコイン」)について、どの程度の規模を重大とみなすか、どこまで保有を認めるか、その裏付けとなる準備資産をどう構成するかといった制度設計の検討を始めました。
年末には、FCAが3つの協議文書を公表しました。その内容は次のとおりです。
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暗号資産活動全般を対象とする包括的な制度
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暗号資産に特化した、開示・相場操縦規制の枠組み
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暗号資産企業に対するプルーデンシャル規制(自己資本やリスク管理に関する規制)
特に注目されるのは、次のような点です。
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暗号資産の貸付や借入(いわゆるレンディング/ボローイング)、ステーキング(暗号資産を預けて報酬を得る行為)も規制の対象に含めていること
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規制の範囲がMiCAよりも広く、分散型金融(DeFi)についても、形式だけでなく実態に基づいて評価し、実質的な統制主体が特定できる場合には、他の事業者と同様の義務を課そうとしていること
中東: ステーブルコイン、トークン化、機関投資家市場
中東地域では、暗号資産市場の拡大と制度化の進展に合わせて、規制の骨組み(アーキテクチャ)の構築が進みました。
UAE(アラブ首長国連邦)は、この地域のハブとしての地位を固めています。中央銀行、ドバイのVARA、アブダビのFSRAなどの当局が、取引所・カストディなどの成熟したライセンス制度を運用しつつ、マーケティングや行為規制、市場の健全性ルールを強化しています。また、決済とトークン化金融に重点を置くステーブルコイン・ペイメントトークン制度も前進させています。
これらの制度では、次のような点が重視されています。
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フルリザーブ(100%準備金を保有すること)
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明確な償還権(いつでも元本を返してもらえる権利)
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強固なガバナンス(内部統制やリスク管理)
その結果、現地通貨建てや、地域の金融機関が発行するステーブルコインへの関心が高まっています。
湾岸地域の他の国では、サウジアラビアとカタールが実証実験段階から一歩進んで、政策の方向性を明確化しました。
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カタールはより構造化されたデジタル資産の枠組みを導入しました。
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サウジアラビアは、トークン化、CBDC(中銀デジタル通貨)のパイロット、「DeFiに近い領域」についてリスクに配慮した制度設計のもとでのイノベーションに力を入れ、規制の対象範囲を段階的に拡大しています。
地域全体のレベルでは、MENAFATF(中東・北アフリカのFATF地域機関)が、FATF基準との整合と相互審査への準備を2025年の優先事項としています。これにより、中東のVASP(暗号資産サービス提供者)に対しては、AML/CFTに関する期待水準が高まり、リスクベースかつデータに基づく監督が当たり前になりつつあることが示されています。
ラテンアメリカ: 構造的な規制枠組みへ
ラテンアメリカでは2025年、AML中心の事後対応型の監督から、すでに高い水準に達している草の根レベルでの暗号資産利用を前提とした、より体系的で構造的な規制枠組みへと明確に移行しました。
- ブラジルは、2022〜2023年に制定された暗号資産やステーブルコインなどのバーチャルアセットに関する包括的な法律を土台として、VASPのライセンス、ガバナンス、行為規制、プルーデンシャル要件、監督報告などに関する詳詳細な下位ルール(政令・省令に相当するレベルの規定)を整えました。これにより、ブラジルは、地域全体における「事実上のベンチマーク(標準的なモデル)」となりつつあります。
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アルゼンチンやメキシコなど他の主要なマーケット(国々)では、
個別・場当たり的な対応やAML対策だけに偏ったアプローチから、消費者保護、市場の健全性、オペレーショナルリスク(システム障害や内部不正など)も含めた、より広範なモデルへと移行を始めました。ただし、法的な確実性や監督当局の能力については、国ごとの差が残っています。
地域全体としては、ステーブルコインの役割に大きな注目が集まっています。特に、
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国際送金
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貿易決済
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インフレに対するヘッジ(価値を守る手段)
といった用途での活用が意識されています。そのため、ステーブルコインの発行、準備資産、償還権、中間業者の義務などについて、要件を明確化する動きが進んでいます。
FATF基準との整合と、今後予定されている相互審査は、この地域におけるAML/CFTの期待水準や、監督当局が何を優先して取り組むべきかを判断する際の共通の基準になっています。
アフリカ:少額利用が牽引する普及と新しい規制枠組み
アフリカでは、すでに定着している実需にもとづく暗号資産の利用に、規制の側が徐々に追いつきつつあります。サブサハラ・アフリカは2025年、暗号資産市場の成長率が世界の地域別ランキングで第3位となりました。オンチェーン取引量は前年比50%以上の増加で、その多くが1万ドル未満の少額取引です。これは、暗号資産が決済・送金・金融アクセスの改善に重要な役割を果たしていることを示しています。
監督面では、南アフリカが大陸の規制アンカーとして台頭。暗号資産は金融商品に分類され、多数の CASP がライセンスの対象となりました。AML/CFT 義務が 2022 年から課され、トラベルルールは2025 年に施行されました。南アフリカ準備銀行は、ステーブルコインや銀行預金などの法定通貨をブロックチェーン上のトークンとして扱う仕組みの分析・政策検討を強化しています。ステーブルコインを対象とする独立した法律はまだ制定されていませんが、将来的に健全性規制(プルーデンシャル規制)や行為規制を本格的に導入していく方向性はすでに明確になっています。
ナイジェリアでは、オンチェーンでの取引量が依然として非常に多い一方で、暗号資産に関する政策については段階的な見直しが続いています。証券規制やAML/CFT枠組みを用いて、取引所などの仲介業者を監督の対象とする一方、自国通貨や為替への影響については慎重な姿勢を崩していません。
主要国の多くでは、中東やアジアとの貿易取引や送金の主要な経路(いわゆる支払回廊/ペイメントコリドー)におけるステーブルコインの利用にも注目が集まっています。トランザクションモニタリング、トラベルルールの実装、リスクベース監督など FATF 整合の AML/CFT 要件の実装に重点が置かれています。境界線上の議論を超え、実際の経済フローに対するデータ駆動の監督へと移行しています。
2026年に注目される論点
2026年の政策カレンダーには、すでに多くの重要なマイルストーンが並んでいます。米国では、市場構造法制が引き続き主要な政策課題として残りますが、他の優先課題との兼ね合いから、年明け以降どの程度のペースで協議が進むかは見通せない状況です。
税務分野では、Crypto‑Asset Reporting Framework(暗号資産報告枠組み)の実装が進み、複数の国が2027年までに初回の情報交換を実施する方針を示しています。
ステーブルコイン規制の具体化
まだステーブルコイン制度を十分に整備・実施できていない国や地域の当局も、2026年にかけて制度づくりと運用の具体化を進めていくと見込まれます。
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米国では、2026年7月までに、連邦および州の当局がGENIUS法を具体的にどう運用するかを定める最終的なルールを整備する予定です。ここには、連邦レベルで認可・監督される発行体の扱い方や、海外で発行されたステーブルコインが米国内で提供される際の要件などが含まれます。
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シンガポールでは、ステーブルコイン制度の法案や、その具体的な運用ルールやガイダンスの内容を確定させる必要があります。
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英国では、FCAがステーブルコインに特化した行為・市場枠組みを協議しており、イングランド銀行は、システミックなステーブルコインに対するプルーデンシャル規制や金融安定上の扱いに注力しています。
もっとも、2026年になっても多くの課題が残ると見られます。金融安定理事会(FSB)は2025年10月、ステーブルコイン枠組みをすでに実装している国・地域であっても、「堅牢なリスク管理、十分な資本バッファ、回復・破綻処理計画の要件がまだ不十分な場合が多い」と指摘しました。
また、ステーブルコイン発行体に対するAML/CFTの期待水準、特にセカンダリーマーケット(取引所など二次市場)での取引監視に関する検討も進んでいます。これに合わせて、FATFは2026年第1四半期にステーブルコインに関する分析を公表する予定であり、これは各国がどのような規制を目指すべきかを考える際の重要な指針になると見込まれます。
AML とサイバーリスクへの注目強化
デジタル資産が世界の金融インフラに深く組み込まれていく中で、規制当局は、その結果生じるシステミックリスク(金融システム全体に波及し得るリスク)への監督・規制を一段と強化しています。暗号資産は、かつてはダークネット上の取引などに用いられるニッチな手段と見なされてきましたが、現在では、多様な犯罪を支える専門的なマネーロンダリング・ネットワークの一部へと進化しています。例えば、A7A5 のように、暗号資産を使った制裁回避の新しいスキーム(手口)も表面化しています。
FATF第5次相互審査の対象範囲拡大とも重なり、「AML/CFTの有効性」を示すプレッシャーは、規制当局と業界の双方にかかり続けます。
同時に、より多くの活動がブロックチェーン上に移るほど、オペレーション上の障害(システム障害や鍵管理のミスなど)の影響は大きくなります。2025年には、暗号資産の盗難額が340億ドルを超え、そのうち少なくとも200億ドルが北朝鮮関連の攻撃によるものとされています。
このような脅威環境を背景に、監督当局はカストディ体制や秘密鍵管理、インシデント対応能力に対する監督を一段と厳格化していくと見られます。
また、これまで「ベストプラクティス」とされてきた多層的なサイバーセキュリティ・フレームワークが、最低限求められる監督基準として位置付けられていく可能性もあります。
暗号資産のセキュリティにおけるオペレーション上の失敗が、国家安全保障や金融システムの安定に広範かつ深刻な影響を及ぼし得ると認識されつつあるためです。
クロスボーダー取引をめぐる規制の分断の深刻化
暗号資産市場は性質上、国境を越えてグローバルに広がっています。しかし、規制は基本的に各国ごとに行われています。EUのような超国家的な枠組みを除けば、現時点では、暗号資産事業者が複数国で共通のライセンスで営業できる「パスポート制度」や、各国当局同士が互いのライセンスや監督結果を認め合う仕組み(相互承認)も、まだごく限られています。
グローバルに事業を展開する暗号資産関連企業は、国・地域ごとにライセンスを取得し、それぞれのルールに合わせたコンプライアンス体制を整える必要があります。そのため、コストと事務負担が大きく増加しています。
また、各国の規制目標が似ている場合でも、ルールの細部が異なることで、国境をまたぐ取引(クロスボーダー取引)の場面で摩擦が生じます。例えば、ステーブルコインの準備資産や償還条件、開示要件などが国ごとに少しずつ違っていると、グローバルに同じステーブルコインを運用することが難しくなります。
さらに、取引所に対するルールの違いによって、現地ユーザーがグローバルなオーダーブック(世界中の注文が集まる板)にアクセスできない場合、流動性や価格形成が国ごとに分断され、投資家にとって不利な状況が生まれかねません。
こうした懸念を踏まえ、2026年には、以下の点でどのような進展が見られるかに注目が集まります。
- クロスボーダー取引に関するルールの不整合をどこまで縮小できるか
- 各国当局間の情報共有や共同監督体制をどのように構築していくか
- パスポート制度や相互承認枠組みの導入・拡大がどこまで進むか
以上が、2025年の暗号資産規制の主な動きと、2026年に向けた注目ポイントです。
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