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FATF(金融活動作業部会)は最近、犯罪資産の回収に関する新たなガイダンスを発表しました。このガイダンスは、政策枠組みの構築、捜査の実施、アセットの差し押さえや没収、さらに回収資産の返還・再配分・活用に至るまで、詳細なロードマップを示しています。2025年11月に発行された資産回収ガイダンスおよびベストプラクティスは、極めて重要なタイミングで発表されました。FATFの評価によると、80%以上の国・地域で資産回収の有効性が低いか中程度にとどまっています。
このガイダンスは、アセットの差し押さえライフサイクルを通じてすべてのアセットタイプを対象としていますが、特に暗号資産(VA)に注目しています。暗号資産は、従来の金融(TradFi)と犯罪活動の双方で重要性が高まっているためです。FATFは、各国・地域に対し、資産回収を政策・オペレーションの最優先事項とするよう呼びかけており、この新ガイダンスを活用してグローバルな金融システムの健全性を守り、被害者やコミュニティへの利益向上を目指すよう求めています。暗号資産の回収には特化したアプローチが必要ですが、適切なツールとトレーニングがあれば、従来型の高額資産よりも追跡や回収が容易である場合もあるとFATFは指摘しています。
Chainalysisは、世界中の政策立案者や捜査官が資産回収の枠組みを強化し「犯罪は割に合わない」ことを示すための専門知識を提供できたことを誇りに思います。当社の調査では、暗号資産の差し押さえの潜在的可能性が非常に大きいことが明らかになっており、オンチェーン残高のうち750億ドル超が犯罪活動と関連しています。
本ブログでは、FATFが示す暗号資産捜査の主要な推奨事項、当局が活用できる実践的なツールや手法、そして世界各地の暗号資産回収の成功事例を紹介します。
暗号資産回収の主要な推奨事項
1. VAを独立したアセットクラスとして扱う
FATFは、暗号資産を資産回収ライフサイクル全体(識別・追跡から差し押さえ、評価、管理、最終的な処分まで)にわたり、独立したアセットクラスとして扱うことを当局に推奨しています。これには以下が必要となる場合があります。
当局が暗号資産を効果的に差し押さえ、管理・処分できるようにするための法改正
捜査官が理解し実行できる明確な国内のVA差し押さえルール
VAの特有の性質を考慮した専門的手続き
2. 初動段階から運用能力を構築する
このガイダンスは、特に法執行機関が暗号資産と「初めて接触」する場面で、現場での認識力が重要であると強調しています。捜査においては、ハードウェアウォレットの発見、書類やデジタルファイル内のシードフレーズの特定、端末内の取引所アカウントやウォレットアプリの把握、さまざまなプラットフォームにおけるVA保有状況の確認など、訓練が必要です。
FATFは特に、非金融部門や非マネーロンダリング専門の職員に対してもVAに関するトレーニングを推奨しています。暗号資産はどんな捜査でも表面化する可能性があるためです。
3. ブロックチェーン分析の導入
特に重要なのは、FATFが捜査にブロックチェーン分析の活用を強く推奨している点です。ガイダンスでは「パブリックブロックチェーンは不変かつリアルタイムな台帳を提供し、迅速な追跡や回収に役立つ可能性がある」「暗号資産は従来の高額物品よりも差し押さえや追跡が容易な場合すらある」と述べています。
このレポートでは、Chainalysisのブロックチェーン分析ツールが法廷で認められた事例として、Bitcoin Fog事件(U.S. v. Sterlingov)を紹介しています。この事件で米連邦地裁はクラスタ化ヒューリスティックやトランザクション追跡などの技術を「高度に信頼できる」と認定し、証拠として採用しました。
FATFのガイダンスは、国ごとにブロックチェーン分析能力にギャップがあることを認めたうえで、内部に能力を持つか、外部事業者を活用することを推奨しています。これらのコストは暗号資産回収の価値・成功率を考慮すると十分に正当化でき、各国のVAリスクに応じて投資すべきとしています。
差し押さえのライフサイクル
FATFのガイダンスは、暗号資産差し押さえの全ライフサイクル(初期取得から長期管理、最終的な売却まで)をカバーしています。技術的な差し押さえ手法と保管・管理上の課題の両方を理解することが、成功する資産回収には不可欠です。
1. 差し押さえの初動
ガイダンスは、VA差し押さえの3つの主要な経路を示しています。
- 秘密鍵の直接取得:ウォレットへのアクセスを制御する暗号化された秘密鍵(シードフレーズ含む)の取得。
- 取引所保管ウォレットからの回収:暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者(VASP)と連携し、カストディアル口座で保有されているアセットの凍結・回収を実施。
- ステーブルコイン発行体による凍結機能:中央集権型発行体の技術的能力を活用し、法的命令に基づき凍結・バーン・送金の巻き戻しを行う。
特にステーブルコインについて、FATFは中央集権型の発行体が「法的命令に基づき資産を凍結したり送金を巻き戻したりする能力を有する」ことを指摘しています。中央集権型ステーブルコインは、発行体が特定ウォレットアドレスの凍結やトークンのバーン、一部の場合は送金の巻き戻しや再割当てをスマートコントラクト機能で実行できるため、法執行機関はこの能力を活用すべきです。
2. 差し押さえた暗号資産の管理
暗号資産を差し押さえた後は、適切な管理が極めて重要です。FATFは以下のベストプラクティスを推奨しています。
コールドストレージなどによるハッキング・不正防止のための強固なサイバーセキュリティ対策
自己保管には一定の複雑さが伴うため、信頼できるVAカストディアンの利用
差し押さえから売却までの明確な手順・ドキュメンテーション
価格変動リスクや規制動向、NFTやミームコイン等、トークンごとの流動性などVA特有リスクの把握
差し押さえた資産の売却時には、FATFは「市場流動性に配慮し、アセット価値を下げるような大量売却を避けること」を推奨しています。場合によっては段階的な売却が必要です。
リアルタイムの官民連携
このガイダンスは、「リアルタイムの暗号資産犯罪対策」を目指した官民連携モデル(PPP)も推進しています。こうした連携は、法執行機関と業界間で迅速な情報共有を可能にし、犯罪検知から阻止までの流れを加速します。
Operation Spincasterは、官民連携によるリアルタイムの対策がいかに実効的かを示した好例です。Chainalysisは、12の公的機関と17の暗号資産取引所と連携し、承認フィッシング詐欺の不正流出を迅速に特定・阻止・凍結を調整し、証拠保全を支援しました。この取り組みで7,000件超のリード(被害額約1億6200万ドル相当)が共有され、アカウント閉鎖や資産差し押さえ、今後の詐欺防止のための知見蓄積につながりました。中には、被害者がオンチェーンで承認を取り消し、6桁の被害を未然に防いだケースもあります。
法執行機関への示唆
FATFは、勧告15(VASPの認可・監督・リスク評価)や勧告16(暗号資産のトラベルルール)に基づき、暗号資産回収の強化を各国に強く促しています。特に「適切なツールとトレーニングがあれば、暗号資産は多くの従来型資産よりも追跡・回収が容易」と明言しており、各機関に対して暗号資産調査力の高度化・ブロックチェーン分析の実務展開・VA回収手続きのエンドツーエンド統合を後押ししています。
Chainalysisによる支援
FATFガイダンスは、暗号資産の効果的な回収には適切なツール・トレーニング・運用体制が不可欠であることを明示しています。Chainalysisは、資産回収の全ライフサイクルを通じて各機関を支援するためのソリューションを提供しています。
Chainalysis ReactorやWallet Scanは、複数のブロックチェーン間で暗号資産トランザクションの識別・追跡・帰属を迅速に行い、迅速な差し押さえ判断に必要なリアルタイム情報を提供します。
Chainalysis Rapidは、法執行機関による暗号資産の初動判断力を強化し、事件への暗号資産関与の有無を迅速に判別して優先調査を効率化します。
当社のAsset Seizure Certificationは、暗号資産の識別・差し押さえ・管理に必要なスキルを身につける専門トレーニングを提供し、FATFが指摘した初動対応能力のギャップを埋めます。
ブロックチェーン分析が資産回収をどのように支援するか、詳しく知りたい方はこちらからデモをご依頼ください。
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